令和2年度埼玉県公立高校入試 数学(選択問題)レビュー

こんにちは。
公立高校受験指導専門塾
英泉塾中浦和校の佐藤です。

 

2020年2月28日、埼玉県公立高校入試の学力検査が無事終了しました。

受験生のみなさん、お疲れさまでした。

3月2日に実技試験や面接があるという受験生はあともう少し、気を抜かずにやるべきことをやっていきましょう。

※埼玉県教育委員会によると、3月2日の試験も予定通り行われるとのことです。(2/29 13:30確認)なお詳細は、埼玉県教育委員会のページをご参照ください。

 

今回、昨日行われた埼玉県公立高校入試の数学(選択問題)のレビューを行っていきます。

問題構成は昨年と大きな変化なし

今年の埼玉県公立高校入試の数学(選択問題)の問題構成は以下の通りです。

大問1 小問集合(42点)
大問2 作図・証明(12点)
大問3 三平方の定理の利用(11点)
大問4 関数(18点)
大問5 空間図形(17点)

選択問題が始まった平成29年度入試(2017年3月実施)の問題のみ大問4題構成でした。

しかしその後から今回にかけて3回試験がありましたが、いずれも大問5題構成でした。

来年度入試もこのまま大問5題となるのではないでしょうか。

 

難易度は易化か

これまでの埼玉県公立高校入試の数学(選択問題)の平均点は以下のように推移してきました。

平成29年度入試(2017年実施)43.2
平成30年度入試(2018年実施)43.7
平成31年度入試(2019年実施)53.5
令和2年度入試(2020年実施)?点

平成30年から31年にかけて、平均点が10点ほど高くなりました。

そのため、今年度の入試では難しくしてくるかと思いきや、そこまで難しくない印象を受けました。

大阪府のC問題や、日比谷高校や西高校といった一部の東京都立の自校作成校の入試問題は最初から最後まで難しい問題が並んでいますが、埼玉県の選択問題はその問題のレベルを目指しているわけではなさそうです。

あくまでも、受験生が努力を積み重ねられてきたかを埼玉県は見たいのではないか、というのが私の見立てです。

平成31年度の埼玉県公立高校入試の数学(選択問題)は、解きやすいものと解きにくいものの難易度の差が大きい問題でした。

そのため解きにくい問題は早い段階で見切りをつけて、解きやすい問題で多くの受験生が正解できたことで、平均点が上がったと考えられます。

今年度の問題は平成31年度にあった解きにくい問題の数が減り、解きやすい問題が増えました。

あとは時間との戦いです。

解く順番さえ間違えなければ、高得点も狙えた問題となっていました。

以上のことから、今年度の埼玉県公立高校入試の数学(選択問題)の難易度は下がったのではないかと予想します。

 

わかるところから解いていきましょう

これから問題ごとに分析していきます。

問題と解答は埼玉県教育委員会のページからアクセスできます。
※PCによる閲覧推奨

大問1 解きやすい問題増+公式を証明する問題はなし

(1)は+と-のミスに気を付けさえすれば大丈夫なはずです。この問題は確実に正解しておきたいところ。

(2)は難しく見えますが、過去3年の出題傾向を踏まえた対策ができていれば、正解できたかと思います。トップ校を合格するのであれば、確実に正解しておきたい問題。

(3)~(7)も難易度としては低めの問題。(5)は以下の画像も参考にしてください。

(8)は大問1の中でも比較的難易度が高い問題かと思われます。解法は以下の画像も参考にしてください。

(9)は学力検査問題と同じ問題です。「最も適切である理由」で悩んだ受験生もいたかと思います。「母集団から無作為に選ぶ(抽出する)」という言葉はよく問題文に書かれてはいますが、その言葉自体を書く問題はほとんど見かけません。標本調査を、解法だけでなく理屈も含めてしっかり理解できているかが問われている問題です。

大問2 作図も証明も典型的な問題

(1)の作図は典型的な問題です。

線分POの垂直二等分線を引いて線分の中点を求め、その中点を中心にPOを直径とした円を作ります。

できた円と円Oの交点に向かってPから線を引けば正解です。

Pから右上に線を引いても、左下に線を引いてもどちらでも正解です。

(2)の証明問題も平行四辺形の典型的な問題です。

7点満点のこの問題、たとえすべて書ききれなくても、部分点は得ておきたいところです。

大問3 学力検査問題と同じ問題。しかし(2)の正答率は低そう

(1)は確実に正解しておきたい問題。

ミスは許されません。そういう問題です。

大問3は(1)も(2)も学力検査問題と同じ問題ですが、(2)の正答率は低いでしょう。

というのも、学力検査問題では(2)でヒントとなる図が問題に描かれていたのですが、学校選択問題ではその図がありません。

つまり(2)の9行にわたる問題文を読んで、自分で図を描くなりイメージするなりしてから、解かなければいけなくなります。

この言葉を図にする作業があるかないかだけで、正答率は大きく変わります。

学校選択問題を採用している高校は、こういった力を受験生に求めているわけです。

前置きが長くなりましたが、解法は以下の画像を参考にしてください。三平方の定理も絡んでくるので厄介な問題ですね。

大問4 (2)②は差がつく問題

大問4は学力検査問題と学校選択問題で同じ問題が出題されました。

(1)は確実に正解しておきたい問題です。

解いた後にちゃんと右下がりかつ切片が8より大きく18未満になっているかを確認しましょう。

(2)①は典型的な問題です。

学校選択問題に向けて対策してきた受験生であれば、こういった問題は1度は目にしたことがあるかと思います。

(2)②は差がつく問題です。

問題の図2を参考に(6,6)は求められるかもしれませんが、もう1つの答えの(0,12)を求めるのは難しいです。

底辺となる線分PQがBより上にあるとき、を思いついたかどうかです。

このパターンは図2には載っていないので、自分で線を引くなりして考える必要があります。

これを思いつくのはなかなか難しいのではないでしょうか。

(2)②の解き方は、以下の画像を参考にしてください。

 

大問5 今後空間図形の対策は必須になる

今年度も空間図形の問題が出ました。

学力検査問題と学校選択問題に分かれる前の埼玉県公立高校入試の数学の問題において、空間図形の出題はあまりありませんでした。

出題されるのが珍しいくらいでした。

しかし、学力検査問題と学校選択問題に分かれた最初の年度の入試で出題されたことを皮切りに、空間図形の出題も珍しくはなくなりました。

昨年度も学校選択問題の大問5でしっかり空間図形の問題が出題されています。

したがって、空間図形の対策も受験までにしっかりと講じておく必要があります。

特に空間図形に三平方の定理が絡んだ問題は要注意です。

時期的に学校でこういった問題に多くの時間をかけられないのではないでしょうか。

ですので、塾のテキストを使ったり、塾に通っていない人は自分で問題集を探して、より多くの問題にふれる必要があります。

 

(1)はまさに空間図形に三平方の定理が絡んだ問題です。

立方体と四角錐に分けて体積を求めましょう。四角錐の体積を求めるときには、×1/3を忘れずに。

(2)は試験終了が迫った中でも冷静さを求められる、とてもしたたかな問題です。

何のプレッシャーもない中で解いたら大したことない問題かもしれませんが、入試本番でいざ出されると、正解しているか不安になる問題です。

答えはBC、FG、GH、CD、BP、DPの6本です。

CPはCからPを通過してさらに伸ばしていくと、EAの延長線とぶつかるので不適です。

(CPとAEは同一平面上にあるためねじれの位置ではない、と考えてももちろんOKです)

(3)は解けなくても気にする必要がない難問です。

さすがに正答率が1%を切るような問題ではないと見ますが、正答率は1けたになると予想します。

 

図を描いて考える癖をつけよう

ここからは未来の受験生に向けたメッセージです。

学校選択問題を採用している高校に行きたいなあ、と少しでも考えているのであれば、図を描いて考える癖をつけられるように今から練習していきましょう。

図を描いて考える、この能力は一朝一夕ではなかなか身に付きません。

実は大問1(6)も学力検査問題と同じ問題ですが、学校選択問題との間で出題の仕方に違いが1つあります。

それは図の有無です。

学校選択問題のほうには図はありませんが、学力検査問題のほうには図がありました。

もちろん埼玉県は意図的にそうした違いをつけたのでしょう。

大問1(6)のような比較的易しい問題では図がなくても正解できるでしょう。

しかし大問3(2)のような難しい問題だと、図がないと正解までたどり着けない受験生が多くなるのが現実です。

周りが正解にたどり着けない中正解できれば、それは自分にとって有利な差になります。

塾や学校の問題集で、図が描いてないけど図を描いた方がわかりやすくなるかも、と思ったらすぐ図を描きましょう。

もしくは、1回解いて間違えたなどで、再度考え直したいとき、ノートに図を描いてからやり直しましょう。

別に完ぺきな図やグラフを描く必要はありません。だいたいでいいのです。

入試当日の数学の試験時間中にきれいな図を描いている時間はありませんから。

大問1に出てくる難しい平方根の問題であったり、作図であったりそういった問題は、受験期に入ればみなさんが通っている塾でも対策するでしょう。

英泉塾でももちろん十二分に対策して、解ける状態になってから入試に臨んでもらいます。この対策で入試に十分間に合います。

しかし、図に描いて考える、これは受験期にも練習できますが、やはり限界があります。

今中学2年生であれば、高校入試まであと1年あります。

中学1年生であれば、あと2年あります。

少しでも長い時間を使って、図に描いて考える練習をすることが、今できる学校選択問題への一番の対策です。

少しの意識の違いがのちに大きな違いを生むことになりますよ。

ローマは一日にして成らず、です。

 

長くなりましたが令和2年度埼玉県公立高校入試の数学(選択問題)のレビューは以上です。

受験生のみなさん、本当にお疲れさまでした!

3月2日に実技試験や面接があるという受験生はあともう少し、気を抜かずにやるべきことをやっていきましょう!