英泉通信2020年3月号を発行しました!
春、3月は希望に満ちた新学年のスタートです。
しかし今年は、新型コロナウィルス感染拡大防止のための「全国の小中高の臨時休校要請」を踏まえて、英泉塾は予定より2週間遅れの3月16日を新学年スタートと決定しました。
約2週間の休講、自宅学習という措置は、英泉塾40年の歴史の中で初めての経験となりました。それぞれの課題、各教科の学習は滞りなく進められたでしょうか。
東日本大震災から9年
思いがけない災禍に、いつ何処で遭遇するかわからない複雑で巨大な社会の中で、私たちは生きています。
9年の歳月が流れましたが、東日本大震災を経験した私たちは、あの瞬間、為す術もなく呆然とし、今まで培ってきたものが崩れ去ってしまったような、無力感や敗北感や恐怖感に襲われました。
日本全体が重く沈んだ雰囲気に包まれていました。被災された人々の苦難や絶望は筆舌に尽くしがたいものだったと思います。
連日テレビに釘付けになっていましたが、ある日、一人の老人へのインタビューが目に留まりました。
津波に襲われ、人が住めなくなってしまった家を一人で直しているところでした。
「早急に補償が必要ですね」という問いかけに、「年老いた自分はこれでいい。何とかやっていくから、お金は前途ある子供たちの教育に使ってもらいたい。教育が大事だ」と老人は答えたのです。
感動し、涙があふれました。いかなる状況にあっても、他者への慈しみの心を忘れない人間の美しさを、素晴らしいと思いました。
新型コロナウイルスの感染拡大
今、新型コロナウィルスの世界的な感染拡大は、非常事態の様相を呈してきました。現実社会のあらゆる面に深刻な影響が出始めています。
コンサートなど、様々なイベントの中止。各種スポーツの試合も中止や延期や無観客での開催。旅館やレストランなどのキャンセル。深刻なマスク不足や買い占めや転売問題など。
この災禍や苦難を乗り切るための最善の方法は、一人ひとりが自分の在り方をしっかり自覚し、一日でも早くこのウィルスの感染を終息させる努力をするということに尽きると思います。
そして、元の平穏な日常を速やかに取り戻したいものです。
基本を徹底しましょう
・手洗いやうがいを徹底すること
・換気を十分にすること
・外出時にはマスクを着用すること
・集団感染が生じやすい所へは出向かないこと
この基本的なことを徹底させましょう。また、退屈やいら立ちや不自由さへの不満なども、自分自身でうまく乗り越えていかねばなりません。
一番大変なのは、この状況の中で社会に出ていき、危険を顧みずに力強く働いているお父さん、お母さん、大人の人たちです。
あなた方は守られています。
そんな中で何ができるか、どう協力していくか、熟考し、行動してほしいです。マイナスをプラスに転じさせる生き方を模索し、何か素晴らしい方法を発見して下さい。若い力、若い心の柔軟な発想力に期待します。
今みなさんに、こんな時だからこそ読んでほしい詩があります。
親から子へと譲られる生命(いのち)の美しさ、尊さが胸に染みる一篇です。希望の明かりがぽっと灯るような気がしませんか。
『ゆずり葉』 河井酔茗(かわいすいめい)
子供たちよ。
これはゆずり葉の木です。
このゆずり葉は
新しい葉が出来ると
入り代わってふるい葉が落ちてしまうのです。
こんなに厚い葉
こんなに大きい葉でも
新しい葉が出来ると無造作(むぞうさ)に落ちる
新しい葉にいのちをゆずって――。
子供たちよ
お前たちは何も欲しがらないでも
すべてのものがお前たちにゆずられるのです。
太陽のまわるかぎり
ゆずられるものは絶えません。
かがやける大都会も
そっくりお前たちがゆずり受けるのです。
読みきれないほどの書物も
みんなお前たちの手に受取るのです。
幸福なる子供たちよ
お前たちの手はまだ小さいけれど――。
世のお父さん、お母さんたちは
何一つ持ってゆかない。
みんなお前たちにゆずってゆくために
いのちあるもの、よいもの、美しいものを、
一生懸命に造っています。
今、お前たちは気が付かないけれど
ひとりでにいのちは延びる。
鳥のようにうたい、
花のように笑っている間に
気が付いてきます。
そしたら子供たちよ。
もう一度ゆずり葉の木の下に立って
ゆずり葉を見る時が来るでしょう。
英泉塾塾長 安田佐和子