新学年度授業のはじまりに寄せて

三月の慈雨に、草木が一斉に芽吹き始め、春の気配があたりを明るく包むこの頃。
ふと気づくと、きみどり色の小さな雑草が、
いままで冬枯れだった庭のそこここにひしめくように生え、
菫（すみれ）の花がうつむき加減に紫の可憐な花を咲かせています。

新しい季節の到来は、英泉塾の新年度の始まりの時でもあります。

時は変わらぬ速度で規則正しく流れ去っていくものですが、
いま新しい学年での学びのスタートを切ったみなさんにとっては、
今日という日は、新鮮な、そして希望に満ちた大切な一日であり、
未来を含む明日という日もまた、そうであろうと思います。

初心忘れず、学習の計画を立て、目標を掲げ、
時間を大切にして、さあスタートしてください。
勉強も生活習慣として定着させてしまうと、
能率的で安定感があり、楽ですね。

■ゼロから始めてみる

しかしまた、新しい学年の始まりや、新しい生活環境の中では、
さまざまな想いが交錯し、緊張感や戸惑いや不安も少なからずあることでしょう。

…そんな時、一度自分を空っぽにして、
ゼロから始めてみるのもいいのではないでしょうか。

人は誰でも苦悩や悲しみを抱えて生きています。

まして、十代の感受性鋭敏な時期には、
表面は何気なく装っていても、心の中には様々な問題、困難を抱えて、
迷ったり悩んだりしていることが多いはず。

ふり返ってみると遠い昔のことですが、
私の中学・高校時代もまさしく悩み、迷いの真っ只中でした。

本と音楽にどっぷりとつかり、現実は嫌で、
どこか遠くに美しい理想郷があるのではないかと夢見ていました。

いじめもなく、たいした競争もなく、まだ電話さえもないような
昭和30年代の私にも青春の彷徨（ほうこう）はあったのです。

まして今日の社会の動向は、平和や幸福や安泰とは違った方へと
突き進んでいる感が否めません。
科学技術がもたらすものによって、人類の未来はどうなっていくのか、
懸念を抱いている人も多いのです。

そんな中で、多かれ少なかれ社会的重圧を受け、感じながらも、
あなたがたは懸命にがんばっていますね。

「ゼロから始める」「ゼロになる」というのは、
肩の荷を下ろして心身ともに軽やかになって、
心を透明にしてみるということです。

■天真爛漫であること

私の敬愛して止まないクリシュナムルティという人は
「人間としての最高の在り方は『天真爛漫』であること」
と言っています。

「天然自然のままで、いつわりや飾り気のないさま」
…とても単純であって、人間が生きる上において,
そんなに難しいことではないようにも思えますが、
さてそれを実践するとなると、
とてつもなく難しいことに思えて途方に暮れます。

いつも明るく自然で、いつわりなく生きている、
そんな清らかな人が傍にいてくれたら、
いつまでもその人のところにいたいなあ…と思います。

天真爛漫に、心かろやかに、新しい季節を歩き始めてみませんか。
古いもの、暗いもの、どうしようもないものは全て捨て去って。

いじめや喧嘩や差別や戦争などのない,
素敵な未来をつくりあげていくのは、
可能性に満ち溢れた若いあなた方の力です。

小学校、中学校、高校と、
くり返しくり返し基礎学力を身につけ、
それを盤石なものにしながら、
やがて本当の学びや自分の生き方を獲得していく若い時代。

しっかり学んでほしいと思います。
そして自分の力であらゆることを感じ考えてほしい。

学びながら優れた頭脳と人間性を
自分のうちに作り上げていってください。

英泉塾という教育の場が、いつもあなたのためにあり、
あなたを生かし伸ばしたいと願い、存在していることを忘れないでくださいね。

英泉塾塾長　安田佐和子

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