【2021年9月号】英泉通信を発行しました!
■「使わない能力は失われていく」
漂う金木犀の香り、夏の終わりの夕暮れ時に感じるあの何とも言えぬ独特な情感、心地よい虫の音。
雨ごとに涼しさが増し、肌で、音で、匂いで、色で、秋の深まりが実感させられます。
都市生活者の私たちにとって自然は遠い存在となりましたが、
私たちの五官は、自然の変わらぬ営みを、
しっかりキャッチしているのだと思います。
ただ残念なことに、せっかく五官が感得した美しいものを、
私たちはすべて心で味わえるわけではないのです。
せわしない現代人は、季節の移り行きを楽しむより、
今やらねばならぬ目の前のことに気をとられがちです。
手元の画面で世界と繋がることに慣れた子どもたちにとっては、
自分の身体感覚で捉えた世界よりも、
自分の見たい世界を自在に見せてくれる小さな画面の方が、
より “リアルで切実な世界” なのかもしれません。
『雨が降ったりやんだりするとき、外に出てみると、雨のにおいや音も様々で、風が冷たい日もあれば、暑い日もあります。
地面がぬれたり、葉っぱがキラキラと輝いたりもします。
最近は、気温の変化も大きく、曇りの日や雨の日も多いと思います。
こんな今だからこそ、外に出て、雨の降っている音や、におい、風を感じてほしいです。』
先日、小学生の国語の授業で、『未来を創るキャリアデザイン教育E-Lab(イーラボ)』を実施しました。
上に紹介した文章は、小学6年生K・NさんがE-Labで発表した、スピーチ原稿の一部を抜粋したものです。
『井戸水も、これを釣瓶(つるべ)で汲み出さなければ、地上にもたらして、その用に充てることはできず、
また鉱物や鉱石もそのまま地中に埋もれていたんでは、物の用に立たないように、
今諸君らにしても、たとえその素質や才能は豊かだとしても、諸君たちが真に学問修養によって自己を錬磨しようとしない限り、その才能も結局は朽ち果てる外ないでしょう。』
哲学者、教育者の森信三が若者に向けて語った言葉です。
使われなくなった能力は失われていく一方です。逆もまた真なり。
磨き抜かれた能力は、しっかりとその人の人生を支える大きな力となるはずです。
■「不易(ふえき)と流行(りゅうこう)」
時代の大きな転換期にあって、古い常識に縛られず、新しい価値を創造してゆくことが、今の子どもたちに求められています。
子どもたちの学びの質も、これからどんどん変わっていくでしょう。
変化は必然なのです。
しかし変わらないもの、変わるべきでないものもあるはずです。
効率や目先の損得ばかりに目を奪われて、本質的価値を見失うことほど恐ろしいことはありません。
この激動の時代にあって、子どもたちの自尊心や自制心、共感能力や他者への思いやり、倫理感や道徳観念といった、自己を内側から支える力の成長がよりいっそう重要になってきます。
これまでないがしろにされてきた「リベラルアーツ(教養)」の必要性も、今叫ばれ始めています。
どんなに時代が大きく変わろうとも、
「人が人を育む」という教育の原則は変わりません。
私たちは日々の学習指導を通して、ただ勉強を教えるだけでなく、感性や情緒も豊かに健やかに育ってほしいと願い、さまざまな取り組みを行っています。
タブレットで勉強を教わる時代で、このような姿勢は今後ますます大きな意味を持ってくるはずです。
これからも、次世代の教育の在り方や、
昔も今も変わらない本質的な学びの意義について、
保護者会や英泉通信等を通じて、
保護者の皆さまと一緒に考えを深め、
想いを共有する機会を持ちたいと思っています。
さまざまな有益な情報や英泉塾の取り組みも発信してゆく予定です。
『成績を必ず上げる。人間を育む。』
40年間変わらず私たちが大切に守り続けてきた信念です。
そしてこれからも、私たちは自分たちの信念に忠実であろうと思います。
不確実性の世界、予測不能の未来を生きる子どもたちが、
将来豊かで幸せな人生を歩んでいけるよう、
この仕事に情熱と持てる力を注ぎ、
子どもたちの知性、感性、情操を豊かに育んでゆきます。
英泉塾代表 安田卓史