英泉通信11月号を発行しました!

秋の自然を味わいました

空が青く澄みわたり、穏やかな秋の陽射しの降り注ぐ朝、近くの別所沼公園を久しぶりに歩いてみました。

見ごろだろうと目指した公孫樹(イチョウ)の紅葉には早く、黄緑色と柔らかい黄色の葉はまだみずみずしくて、近くで仰ぎ見たこの大樹たちには、何か神々しいほどの存在感がありました。

欅(けやき)、コナラ、メタセコイア、などの威風堂々とした樹木の枝々が風に揺れて、地面に散り敷いた紅葉がとてもきれいでした。

1歳2か月の男の子が落葉を踏んで、走り過ぎて行く人の真似をするように、少し身体を傾けて走ろうとしている姿は、覚束なくも可愛くて、見とれてしまいました。

毎日こうやって散歩しているのだと話してくれたお母さんは優しそうでした。「毎日のお散歩、素晴らしいですね。坊やはとても幸せ!」と思わず言ってしまいました。

木々を吹き渡る風と鳥の声を聞きながら、しばし陶然とした気分で、深呼吸をし、歩き、立ち止まり、限りなく与え続けてくれる自然のエネルギーを満喫しました。GoToトラベルはなくとも、こんな近くにしばしの安らぎの空間がありました。

 

コロナの中で素晴らしい時間を

寒さに向かってまたコロナが拡大しそうな気配ですが、完璧な対策をとって試行錯誤しながら、各方面の活動が徐々に復活し始めたようです。

体操の国際大会『友情と絆の大会』が11月に日本で開催され、内村航平選手が「ブレトシュナイダー」というH難度の大技を見事成功させ、15.200という高得点を出しました。

この神技的な鉄棒をいったい彼はどれくらい練習したのでしょうか。練習のために「動画を一万回は見た」ということですから、気の遠くなるような凄まじい練習量なのでしょう。人間てすごい、と心から感動し、尊敬の念を覚えます。

 

また、ウイーンフィルハーモニー管弦楽団の約120人が来日しました。楽団員は徹底的なコロナ対策をして、11月5日から日本の各地で演奏しています。

「(コロナウイルス禍の中)未来に向けてレールを敷くツアー。文化的な生活を取り戻すビジョンを提示し、音楽、文化がどれほど大切か、皆さまと共有したい」と楽団員たちは意欲的です。

本当の美しい音を聴いてもらいたいと、舞台の演奏は通常通りの密。観客は「ブラボー」という声援ができない代わりに、いつもの5倍も拍手したそうです。熱い心の交流です。

 

好きな時、当たり前に、スポーツやライブや映画などを見に行けることの有り難さ。世の中が平常に戻り、何の心配もなく過ごせる時が早く来ますようにと、願わずにはいられません。

みなさんの日常はいかがですか。

小学生から高校生までの、生命(いのち)はつらつとした若いみなさん!

柔軟に、様々な工夫をしながら、勉強も部活も趣味も、真剣に頑張って、日々滞りなく生き生きと生活していることと思います。

学生でいられる自由な時間は尊いものです。若い肉体と、柔軟な頭脳と、豊かな感性を持って、精一杯、素晴らしい時間を過ごしてほしいと思います。

 

両手いっぱいの美しい花束

生きるということ、人生は、苦しいことの方が圧倒的に多いのですが、それを回避することなく突き進み、乗り越えることによって得られる素晴らしい境地は幸せそのものだと思います。

 

私もコロナ自粛の期間、友達との約束の下、老齢ながら果敢な挑戦をしました。

7月にドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』全4巻を読み、8月にはマルタン・デュガールの『チボー家の人々』全13巻を読みました。

長編小説は肉体的な負担が大きいと、78歳の今、痛感しますが、読了して良かったと、心の底から思います。若い頃に読んだのとは全く違う人生や人間の姿を味わうことができました。

チボー家の次男ジャックと、ジェンニーの恋愛など美しすぎて、思い出しては涙しました。この歳になって初めてこんな素敵な恋愛小説を読んだと思ったくらいに。

しかしこの『チボー家の人々』は決して恋愛小説ではありません。生も死も愛も戦争も、そして人間の底知れない奥深さ、複雑さなど、重いテーマが13巻、これが一人で書いている創作なのかと、驚かずにはいられず、芸術のすごさに圧倒されます。『カラマーゾフの兄弟』然りです。

あらためて、小説家(芸術家)の偉大さに魂を揺さぶられる思いでした。

人間の一生は、この世のあらゆることを知り、わかるのには短すぎます。

学問の世界でもその他の世界でも、偉業を成し遂げた人々の努力は凄まじい。
そして、その一人ひとりの努力がどれだけ人々を幸せに豊かにしてくれていることでしょう。

未来、夢、希望、可能性、そんな素晴らしい宝物を両手にいっぱい、まるで美しい花束を抱えるように持っている、若いみなさんの一人ひとりに今、心から申し上げたい。

好奇心を持って、自分の願う方へどんどん歩み進んでください。思いきり挑戦してください。かけがえのないあなたの人生のために。

英泉塾塾長 安田佐和子